タティングレースについて
タティングレースは小さな船形の道具=シャトルと手を使って結び目を作っていく技法です。基本の結び目をダブルステッチと言います。これはマクラメでタッチング結び、英語でlark’s headとも呼ばれる結び目と同じです。
シャトル2往復で一つのステッチができます。主に使用しているDMCの80番レース糸だと、1ステッチが0.6mmほどです。
ダブルステッチで構成された輪状の「リング」と線状の「チェイン」を組み合わせて繋ぎながらさまざまなデザインを作り上げます。
道具はてのひらにのるくらい小さくて少なく、最低限必要なのはシャトル2個とかぎ針、はさみ、糸だけです。限られた道具から多彩なデザインを表現できるところが魅力です。
タティングレースの歴史
基本の結び目は古代エジプトでも使われていたことがわかっています。
タティングレースとしての技法の確立は16世紀イタリアだと考えられており、漁網を作る技術から発展したという説もあります。
18世紀ヨーロッパでは優雅な手芸とされ、装飾的なシャトルを持った貴婦人の肖像画がいくつも残されています。日本には明治初期に伝えられたと言われており、宣教師の妻から教わった女性がエジングを作り外国に売っていたという証言*があります。
タティングレースは編み物などと比較すると知名度が低い技法のため、日本語の書籍に登場しているのは円城塔の「道化師の蝶」だけではないかと思います。他の作品をご存知の方がいらしたら是非教えてください。
機内へは編み針や針を持ち込めないから、わたしの左手にはタティング・シャトルが握られていて、右手に張られたレース糸の吊り橋へと割り込み、戻り、往復している。レース糸を時間の後ろではなく前へとためるタティング・シャトルはわたしのお気に入りの道具の一つだ。
円城塔「道化師の蝶」講談社 2012年 52頁